日本と違う、韓国の法制度 ①大統領制

日本と違う、韓国の法制度 ①大統領制

日本と韓国の法律の似ている部分については前回お話しましたが、今回は韓国の法律が日本の法律と比較して異なる部分、特徴的な部分について説明していきたいと思います。

法律に関する部分で日韓の違うところというと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?

まず、代表的な違いといえば、韓国は大統領制を採用していることを挙げられると思います。今回の記事では、韓国の大統領制について、どのような特徴があるのか説明します。

韓国の大統領制とは?
どのような特徴があるのか?
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韓国の大統領制

これは政治とも関わりが深い部分ですが、政治のシステム、つまり行政についてももちろん法律で定められているため、韓国の法律に関わる部分であるといえます。

韓国では、日本の議員内閣制とは異なる大統領制を採用しています。この大統領制がどのような制度であるのか、詳しく見ていきます。

韓国の大統領制について

韓国の大統領は韓国国民の直接選挙で選ばれ、任期は5年再選はできないので1期限りになります。日本の内閣総理大臣は間接選挙で選ばれ、任期は実質的に4年が最長ですが、再選が可能なので安倍前総理にように再度内閣総理大臣になることもできます(与党の政党規約よって再選規定は異なります)。

韓国の大統領は、行政府の長である国家元首としての地位を持ち、また、徴兵制のある韓国では、大統領が韓国の3つの軍隊(陸軍・海軍・空軍)の最高司令官としての地位も持っています。

そして、国務総理国務委員が大統領を補佐しています。国務総理は大統領を補佐し、各行政機関を統括する役割を有しているため、日本の官房長官に似たような官職であるといえます。また、大統領が弾劾などによる欠位、あるいは事故などによって職務の遂行ができなくなったときに、国務総理が大統領の任務を代行します。最近では、朴槿恵(パク・クネ)前大統領が職務停止になった際に、当時の国務総理であった黄教安(ファン・ギョアン)国務総理が大統領の権限を臨時代行していました。現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を補佐している国務総理は、丁世均(チョン・セギュン)国務総理です。

国務委員も大統領を補佐している点では国務総理と同じですが、行政機関の各部処庁(日本の省庁に相当します)の長としての地位を有していて、長官と呼ばれています。日本でいう、国務大臣に相当する官職です。

アメリカの大統領制と異なるところ

前回お話ししたように、韓国法はドイツ法やフランス法、そして日本法が属している大陸法体系にぞくしていますが、大統領制を採用することによって英米法体系であるアメリカ法の影響を受けている部分もあります。

ですが、韓国の大統領制はアメリカの大統領制と全く同じというわけではなく、アメリカ型の大統領制と異なる部分もあります。

まず、韓国では大統領は再選ができないため、1期のみの任期となりますが、アメリカでは2期までは再選が可能とされています(3選禁止規定)。

また、国務総理や国務委員は国会議員を兼職することができ、つまり国会議員でなくてもよいとされています(ただし、現役の軍人はなることができません)。韓国では、国務総理が臨時の際は大統領の任務を代行するため、副大統領(韓国では、副統領と呼ばれていました)は現在は廃止されています。

そして、韓国では行政府(内閣)も法律案を提出することができます。大統領制においては、議院内閣制に比べて立法、行政、司法の三権分立が厳格になされていますが、このような点をみると韓国の大統領制は議院内閣制に近い要素もあり、アメリカの大統領制に比べると三権分立がより緩やかであるといえます。

大統領の弾劾制度

大統領制のもう一つの特徴として、大統領を弾劾することができます。

「弾劾」とは、身分が保証された官職についている人が職務上の義務に違反した場合などに、国会での決議、そして裁判によって、その職を辞めさせたり処罰をすることです。

大統領制においては上でもお話ししたように、議院内閣制においてよりも、立法、行政、司法の三権分立が厳格になされています。そのため、大統領に権限が集中しないように、大統領の違法行為については、国会(=立法)が大統領に対して法的責任を追及することができる制度を備えています。

ですが、大統領制における弾劾はそれほど簡単な条件ではありません。韓国での大統領に対する弾劾の決議は、国会在籍議員の過半数の発議を経て、国会在籍議員の3分の2以上が賛成すれば可決されます。国会在籍議員の3分の2以上の賛成を要求しているというのは、憲法改正における議決のようにハードルの高い条件であることからも、弾劾は簡単ではないことがうかがえます。可決がされると大統領の権限は停止され、国務総理が大統領の職務を代行します。

さらに、国会で可決された弾劾の決議について、最終的に憲法裁判所が審査し、判断を下します。憲法裁判所の裁判官9人のうち6人以上の賛成、つまり3分の2以上の賛成があれば弾劾が成立します。憲法裁判所とは日本にはない裁判の機関であり、これも韓国の法律における特徴的な部分でもあるので、また次の機会に説明したいと思います。

朴槿恵前大統領の弾劾事件

そんな厳しい条件の大統領に対する弾劾制度ですが、韓国では過去にこの弾劾手続が行われたことが2度あります。

1度目は、2004年に行われた盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領に対する弾劾手続で、こちらは国会では弾劾が可決されましたが、憲法裁判所で棄却され、職務を停止されていた大統領は即時に復帰することになりました。

2度目は、皆さんも記憶に新しいかと思いますが、2016年12月に朴槿恵前大統領の弾劾が国会で可決されました。

これはいわゆる崔順実(チェ・スンシル)ゲートなどとも言われた事件で、朴槿恵前大統領の友人である民間人の崔順実が国政に関与していたことが発覚して、財閥企業に対する支援、そしてその見返りとしての崔順実が実質的に支配している財団へ対する出資の疑惑、さらに2014年のセウォル号沈没事故の当日の空白の7時間など、次々と問題が浮き彫りになりました。

朴槿恵前大統領の退陣と弾劾を求める韓国国民は、「ろうそく集会」と呼ばれるデモを行い政府に訴えかけました。デモといえば過激的なイメージもありますが、このろうそく集会では暴力を使わない、平和的な訴えが象徴とされていました。憲法裁判所での判断においては対象外とされていましたが、多くの学生の命が奪われたセウォル号沈没事故が関連していたことも、この平和的な訴えにつながったのではないかと思います。

ろうそく集会の様子

ろうそく集会が行われていた頃は、寒い日が続く真冬に、毎週末のように韓国ソウルのメインストリートを大規模に封鎖していました。たくさんの韓国国民が集まって各々の形で国を、社会を変えようとしている姿はとても印象的でした。

そして、2017年3月、憲法裁判所で朴槿恵前大統領の弾劾に対する判断が下され、裁判官全員一致で大統領の罷免が決定しました。朴槿恵前大統領は1987年の民主化以来、任期の途中で失職した初の大統領となりました。

この憲法裁判所での決定は、当時あらゆるメディアで生放送で配信されていました。現職の大統領が弾劾裁判によって罷免されるという歴史的な瞬間を韓国現地で経験し、そして、国民の力でこれをやり遂げたという一致団結の雰囲気の中で、韓国ならではのダイナミックな社会の流れを感じました。





まとめ

韓国の大統領制は、日本の議員内閣制とは異なり、直接選挙で大統領が選ばれ、任期は5年で再選はできない。
大統領が違法行為をした場合は、弾劾することができる。

現在の第19代大統領である文在寅大統領の任期は、2022年5月9日までの予定です。来年度は、残りの在任期間の動向や、次の大統領選挙についても関心が高まる一年となりそうですね。

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