日本と違う、韓国の法制度 ②軍隊・徴兵制

日本と違う、韓国の法制度 ②軍隊・徴兵制

日本と韓国の法律で違うところといえば、韓国の軍隊徴兵制も特徴的な制度であると思います。最近では、BTS(防弾少年団)の軍入隊が近づいていることが度々話題にもなっていたり、韓国の芸能人たちも軍隊に行くことがよく知られているように、韓国では徴兵制によって男性が軍隊に入隊して兵役を行うことが義務付けられています。

今回の記事では、韓国の軍隊の制度について詳しく見ていきます。

韓国の徴兵制とは?
どのような条件や兵役の形態があるのか?
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軍隊に行く年齢

韓国国籍の男性は、18歳になる年の1月1日から兵役の義務が発生し、「兵役準備役」という身分になります。兵役準備役になることによって、国から兵役に関する情報についての管理が始まります。

その後、19歳になる年に兵役を行えるかどうかの判定を行うための検査である、「兵役判定検査」を受けなければなりません。兵役判定検査は、心理検査→身体検査→適性の分類→兵役処分(等級)の判定の過程で行われ、最終的に1~7級の等級に分かれた判定結果が出ます。等級の区分とそれに伴う服務の形態については、後ほど詳しく見ていきます。

1~4級の判定を受けた者は、原則20歳~28歳の誕生日を迎える前までに入隊しなければなりません。ですが、高校(またはそれに準ずる教育機関)以上の学校に在学中の学生である場合は、各学校の種類別によって一定の年齢まで入隊の時期を延期することができます。例えば、4年生大学の場合は24歳まで、大学院の修士課程(2年制)は26歳まで、博士課程は28歳まで延期が可能です。

その他にも、各種学校の入学試験のための準備期間(浪人生など)や、病気、高卒以下の就業者、子どもの養育、ベンチャー企業の創業者、やむを得ない理由などによって、原則5回まで、通算2年の入隊の延期が可能とされています。

また、25歳以上で兵役を終えていない者などが海外旅行をする場合は、兵務庁の許可を得なければならないなど、海外への渡航を制限して兵役の忌避に対して厳しく対策しています。

徴兵される期間や休暇、給料など

軍隊に行く期間

軍隊に行く期間は、最も一般的な場合である「現役兵(1~3級)」として陸軍に所属する場合であれば、最初の基本軍事訓練の5週間を含む18ヶ月間が服務期間となります。2020年6月から、従来の21ヶ月から18ヶ月へ3ヶ月短縮されることとなったように、年々軍隊の服務期間は短くなる傾向にあると言えます。

最も一般的な陸軍の場合、階級別に二等兵2ヶ月、一等兵6ヶ月、上等兵6ヶ月、兵長4ヶ月の合計18ヶ月の服務となっています。

軍隊での休暇

軍隊にも決められた休暇日数があり、休暇を取って外出することが許されています。休暇の際も軍服を身につけることが義務付けられているため、よく街中で軍服姿の人を見かけるのは休暇に出てきている軍人であるということなのです。

軍隊での休暇には大きく分けて4種類があります。年休、公休、請願休暇、特別休暇の4種類をそれぞれ見ていきます。

年休(연가)

年休は、年次休暇または定期休暇のことで、陸軍の場合18ヶ月の服務期間に対して24日の年休が与えられます。

一般的には、一等兵のうちに7泊8日、上等兵のうちに7泊8日、兵長のうちに7泊8日というように、階級に合わせて消化するように奨励されています。

公休(공가)

公休とは、名前の通り公式的に認められる休暇のことです。服務中の疾病や負傷による治療のための休暇や、国の行事に参加する場合などがこれに当てはまります。

請願休暇(청원휴가)

請願休暇とは、申請すると認められる休暇のことです。服務中以外の病気休暇や、慶弔事の場合に申請を行うと年休とは別途に休暇が与えられます。

特別休暇(특별 휴가)

特別休暇には、褒賞休暇や補償休暇、慰労休暇が含まれます。

・褒賞休暇: 善行や功労に対して与えられる休暇で、陸軍の場合は最大16~18日の褒賞休暇が与えられます。

・補償休暇: 1日8時間以上、1週間に40時間以上の勤務をした場合に、超過勤務に対する補償として与えられる休暇です。1ヶ月に3日以内、全体で10日以内の範囲で与えられます。

・慰労休暇: 特別に大変な勤務をした場合、7日以内の範囲で与えられる休暇のことです。

新兵激励外泊

4種類の休暇以外にも、新兵激励外泊といういわゆる「100日休暇」という休暇があります。新兵、つまり二等兵には年休がありませんが、その代わりの休暇がこれに当たります。最初の基本軍事訓練を修了して部隊に配置された後、3泊4日の休暇があります。以前は服務期間の約100日目に与えられる休暇として、「100日休暇」と呼ばれていましたが、現在は服務期間の短縮により100日より早い時期に休暇を取れるようになったため、現在は新兵激励外泊と呼ばれています。

その他にも、褒賞休暇と似たようなもので、成果型の外出/外泊許可が与えられることもあります。また、軍隊の中の面会室にて午前8時から午後5時の間まで、軍隊の任務遂行に支障のない範囲内で許可をもらって面会をすることもできます。

*現在はコロナの影響で休暇に関する特別な制限があったり、訓練所及び軍部隊での面会が制限されているとのことです。

軍人の給料

軍人にも階級に応じてお給料が支払われます。

2020年及び2021年の基準の月給は、二等兵で408,100ウォン、一等兵で441,700ウォン、上等兵で488,200ウォン、兵長で540,900ウォンとなっています。軍隊でのお給料には所得税は発生しないため、上記の金額をそのまま受け取ることになります。

物価の上昇に応じて軍人のお給料も年々増加傾向にあり、2022年には各階級10万ウォンずつ程度上がる予定とされていますが、一番上の階級でも月64,000円程度と、微々たるものです。

ちなみに、2002年の二等兵の月給は約1,600円だったとか…。

軍人と連絡を取る方法

これまでは、軍隊にいる軍人と連絡を取るには軍隊からの一方的な電話や手紙などでのみ可能でありましたが、2019年4月から日課後の携帯電話の使用が許可されるなど、待遇の改善が行われています。

最初の5週間の基本軍事訓練の修了後、部隊に配置されると家族に住所が伝えられるので、郵便局を通じて軍人に携帯電話を送ることができます。また、軍人の携帯電話の使用には制限があるため、軍人専用の携帯料金プランなども各通信会社から出ていたりします。

軍人が携帯電話を使用できる時間

平日: 17:30~21:00
週末及び公休日: 8:00~21:00

*部隊によって時間帯が異なる場合があります。

携帯電話の使用にあたって禁止されていること

軍隊においては、何よりも軍の機密情報の漏洩などの保安に関する問題が重要視されています。そのため、携帯電話の使用にあたってもいくつか禁止されていることがあります。

まず、カメラは一切使用することができません。軍の内部や機密情報を撮影して情報が漏洩することを防止するためのもので、保安専用のアプリをスマホにダウンロードすることによってカメラの使用を制御しています。また、カメラが使用できないため、テレビ電話も禁止されています。

また、軍の機密情報が入ったパソコンへのアクセスがあってはいけないため、パソコンに繋がる可能性のあるブルートゥースイヤホンは使用が禁止されています。通常の線のあるイヤフォンであれば使用が可能です。さらに、分離型の充電器、つまりUSBケーブルがついている充電器も使用することができません。

部隊に配属され、住所が分かれば手紙や荷物などを送ることも可能です。

兵役判定検査による兵役の区分と服務形態

上でお話したように、兵役判定検査によって1~7級の等級に分けられ、その等級によって服務の形態が異なったり、場合によっては兵役が免除となります。

1~3級(現役兵)

1~3級と判定された場合は、現役兵として陸軍・海軍・空軍などに入隊することになります。

また、身体等級が1~3級と判定された場合であっても、高校中退以下の低学歴者は4級と同じ補充役の対象となります。ですが、現役兵として入隊することを希望する場合は、申請によって現役兵として入隊することができます。

4級(補充役)

兵役判定検査の結果、医学的に見て現役兵としての服務が不可能と判断された場合が4級に該当します。その他にも、父母や配偶者、兄弟姉妹の中に、戦没・殉職及び戦傷の程度が高い軍人・軍警がいる場合や、1年以上の実刑宣告者や執行猶予者なども補充役に該当します。

補充役は、社会服務要員として公的機関において社会福祉に関する業務や行政業務の支援に関する服務を行います。業務機関や形態により異なりますが、該当の機関に自宅から通勤し、平日は9~18時、土曜日は9~13時まで、一般の公務員のような勤務形態となっています。

5級(戦時勤労役)

5級の判定を受けた場合は、戦時勤労役として兵役期間中に有事の時のみ出動することとなっています。つまり、平常時は兵役の義務が免除されるもので、一般的に兵役免除といわれるほとんどの場合が戦時勤労役に該当しています。

孤児や、帰化をした人、女性から男性に性転換をした人、1年6ヶ月以上の実刑宣告者が戦時勤労役に該当します。また、1991年以前生まれの外見上混血が明確な人や、1992年以前生まれの中学中卒以下の学歴の人も戦時勤労役に該当します。外見上混血が明確な人、孤児、帰化した人のうち、現役兵または社会服務要員として服務を希望する場合は、申請によって服務を行うことができます・

6級(兵役免除)

現役や補充役での服務が不可能なほどの身体的・精神的な障害を持つ人が兵役を免除されることとなります。また、北朝鮮からの脱北者や身長が140cm以下の人も兵役免除に該当します。

7級(再検査)

7級の判定は再検査の対象者であることを意味しており、病気の治療中などの理由で再検査が必要であるとみなされた場合は7級に該当します。また、兵役判定検査を受けてから4年間入隊の延期を行っている場合は、5年目になる年に再度兵役判定検査を受けなければなりません。

その他に兵役が免除となる場合

家族を扶養しなければならない場合など、扶養者として家族の生計のために軍隊での服務が難しい場合に、その扶養の比率、財産額、月の収入額等の基準に照らし合わせて、現役兵または補充役の判定を受けても、戦時勤労役や兵役免除として扱われる場合もあります。

代替服務

一般的な現役兵や社会服務要員としての服務以外にも、別の服務を行うことによって兵役を遂行したとみなされる代替服務というものがあります。代替服務には以下の通り様々な区分があります。

常勤予備役(상근예비역)制度

常勤予備役と呼ばれるこの制度は、現役兵と同じように入隊し、基本軍事訓練を修了した後、自宅から出退勤して勤務ができる制度です。常勤予備役となった場合は、自宅から近い軍の機関などで勤務をすることができます。

常勤予備役は現役兵の中から学力や身体等級、年齢等を考慮して選抜される方式ですが、子どもを養育している場合は常勤予備役に志願することができます。

転換服務(義務警察、義務消防員)

警察庁海洋警察消防庁に所属し、警察や消防隊の業務をサポートする勤務を行うことによって軍隊での服務としてみなされる、義務警察(의무경찰)や義務消防員(의무소방원)としての転換服務というものもあります。

転換服務は志願制で、現役兵として判定された場合にのみ応募することができます。除隊後には警察や消防隊としての特別採用の機会もあり、競争率はとても高いと言われています。

芸術・体育要員

芸術や体育の分野で活躍した人が、軍隊での服務の代わりに芸術・体育要員として服務する制度です。音楽や舞踊などの芸術の分野の国際大会で一定の賞を受賞した人や、体育の分野ではオリンピック3位以上、アジア大会1位の成績を収めた人がこれに該当します。

芸術・体育要員は、34ヶ月の服務期間のうち544時間以上、青少年や未就学児に対して講演や講習などのボランティア活動を行うことで、服務を行ったとみなされます。

専門研究、産業技能要員

専門研究要員は、科学技術の分野において修士以上の学位を取得した人などが、政府指定の業者にて36ヶ月間勤務をすることによって服務を行ったとみなすものです。

産業技能要員は、国家産業の育成・発展のために、一定の資格や学力などの条件を満たしている人が、製造・生産などの分野において政府指定の業者にて一定期間勤務をすることによって服務を行ったとみなすものです。産業技術要員の服務期間は、現役兵の場合は34ヶ月、社会服務要員の場合は23ヶ月となっています。

乗船勤務予備役

乗船勤務予備役は、戦時などの非常時に物資を輸送するための業務等のために、海運·水産業者にて36ヶ月間乗船勤務をすることによって服務を行ったとみなすものです。

現役兵で、指定の教育機関で教育を受け、航海士·機関士の免許を所持している人が志願することができます。

特殊兵

特殊兵は、いわゆるエリート人材が軍隊の中の特殊な職種に就くことができ、その勤務によって兵役の服務を代替するものです。

例えば、医師(歯科医師、韓医師を含む)・獣医師の免許を持っている人は軍の医療施設で勤務することができたり、裁判官・検事・弁護士の免許を持っている人は法務官として軍の法務分野に関わる業務を行います。

また、学軍軍士官候補生(ROTC)という、大学在学者の成績優秀者が志願することができ、優秀な将校(軍の幹部候補生)を養成するための特別な軍人訓練を受けることができる代替服務もあります。

除隊後

軍隊から除隊した後も、実は「転役」といって兵役の義務が完全に終わったわけではありません。

転役後は予備役(予備軍)として8年間の服務があります。予備役は年に数回召集されて、除隊後の年数によって半日~3日程度の再訓練を行います。

8年間の予備役が終了すると、その次は40歳まで民防衛(民防衛隊)に編成されます。民防衛は年に一度、4時間の簡単な訓練を受けることとなっています。

ちなみに、この予備役や民防衛の訓練は国民の義務であるため、訓練の日は学校や会社を公式的に休むことができます。





まとめ

韓国の徴兵制は、約2年間の兵役だけでなく、40歳になるまで訓練がある。
身体や個々の能力に応じて様々な兵役の服務形態がある。

これまでみてきたように、韓国の徴兵制は約2年間の現役兵としての兵役だけでなく、除隊してからも40歳になるまで毎年訓練に参加することが義務付けられていて、韓国人男性にとっては常に韓国の国防に携わっているという意識を感じるものではないかと思います。

また、軍隊での服務期間が短縮される傾向にあったり、服務期間中の待遇も昔と比べると大幅に改善されているようで、時代の流れに応じて韓国の軍隊の制度も大きく変わってきているようです。

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